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出会うからだ 4 触れる 私の経験

竹内敏晴氏のレッスンを受けているときの事でした。
二人組になって、一人はうつぶせで床に寝ています。
私はその横に座って、ただ、相手の背中に手を当てていました。
手のひらからは相手の息づかいが感じられます。
静かだけれど深くゆっくりとしたリズムの呼吸が手のひらを通して伝わって来ます。
相手の温かさも伝わってきます。
温かさは徐々に高まり、私の手のひらと相手の背中のその部分が相手の衣服を通しても、
どんどんと熱くなっていくような感じです。
その温かさは手のひらを通して私の手首、肘、肩、首、背中へと広がっていくのも感じられました。

同じように二人組になって何組かが部屋の中にいます。

しかし、その存在が無いかのような静けさが、空間全体を包んでいくのが伝わって来ます。
私自身の呼吸も深く静かになり、触れている手のひらがかすかに汗ばんできているのに気づいていました。
私は目を閉じ、ただ、そこにいました。
手のひらを通して相手に触れたままで。
私は、どれぐらい時間が過ぎたのかも次第に解らなくなってきました。
時間の流れというものへの興味がほとんど消えたのでしょう。
 そんなときです。不思議な感覚に包まれました。
私の手のひらが相手の背中の中に入り込んで、一つになっている。
私の皮膚と相手の皮膚が溶けて融合している。
二人だけれど一人。一人だけれど二人。

そんな、非常に不思議な感覚です。物理的には私と相手の背中の皮膚の間には、服の布があります。
布が私と相手をしっかり分けている境界の役目を果たしています。
ですが、この解け合うような感覚は私にとってとてもリアルなものでした。

 「そろそろ、ゆっくりと手のひらを離してください。ゆっくりと時間をかけて。」
と、竹内さんの声が響きました。
そのことばで、私の感覚はその空間全体に徐々に引き戻されました。
そして、時間をかけゆっくりと手のひらを手首の方から指先の方向に持ち上げるように離していきました。最後の中指と薬指の指先が相手から離れる瞬間、涙がこぼれました。部地理的には離れても、
しばらくはまだ繋がっているような感覚が指先を通して感じられました。
手のひらが私の太ももの上にやっと、本当にやっと戻ってきました。

 お互いの経験をシェアしました。私に起きたことを率直に相手に伝えました。
すると、相手もほぼ私と同じような経験をしていたことが解り、お互いに驚きました。相手は
 「定行さんの手のひらが、膨らんで、私のからだの中に少し入り込んできた映像が見えた。」
と言っていました。
 二人の経験を全体の場で話しました。
竹内さんは次のようなことをたぶん、話してくれました。
 「同じような経験の報告を何度も聞いたことがある。相手のからだの中に手のひらが入り込むという事は、物理的にはありえないことです。だけど、経験としては起きている。なぜそうなのか。どうしてそうなるのか。ということはとりあえず脇に置いてほしい。ただ、定行君達はその経験をした。そして、共有した。それだけでいい。」
と。

 マルティン・ブーバーは、

自分と他者や外界との関係性について二つあると言っています。
一つは「我ーそれ」の関係。他者や外にあるものを分類し、分析し観察の対象として見る関係性です。
もう一つは「我ー汝」の関係。他者や外界にあるものとの境界が無くなり、直接的に、自分の中に入り込んでくる。出会うという関係です。科学や社会の発展には「我ーそれ」の関係は非常に大切だけれど、人間はそれだけでは生きてはいけない。
非常に感覚的に直接出会う「我ー汝」の関係も必要だと。
 
 私は、さっきの触れるレッスンの中で、
ある瞬間に出会ったのだと思っています。だから私のからだに大きな変化が起きた。

うまくことばにはならなかったけれど、離れる瞬間に涙があふれたのでしょう。

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プロフィール

定行 俊彰

Author:定行 俊彰
ゲシュタルト療法のファシリテーターとして活動しています。からだとこころのつながりに妙味があり、「からだの声に耳を澄ます」ボディワークを展開中。

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